『海の色が語る地球環境』


 エメラルドグリーンの珊瑚礁には生きた珊瑚はいない、温暖化を加速させる黒い海、紺碧のエーゲ海は海の砂漠・・・。目次を読んだだけでチョット待ってくれ、どういうことなんだ?と聞きたくなる。著者の功刀正行(くぬぎまさゆき)は国立環境研究所の客員研究員。観測船で巡った緑、黒、赤、赤褐色、青、金、銀に見える海を本書の第一部第一章「七色の水」で紹介する。「七つの海」と言われることは多いが、「七色の海」は初めて。なぜそのように見えるのかを分かりやすく科学的に説明してくれる。観測のための南極への旅などは、旅行記として読んでも面白い。

 第二部では地球規模での水の循環を取り上げる。海水は海流となって世界をおよそ2000年で一周回っている。一方、海水表面から蒸発した水蒸気は高度を上げるに従って雲となり、雨になる。その内およそ1割が陸上に降り、川や湖となり地下水になる。植物を育て、我々動物の体を構成する。地球上の水を多い順に並べると、97%以上を占める海水、2%程度を占める氷、0.4%が深層の地下水、我々が使える真水はわずか0.3%程度だそうだ。これらは海流や蒸発・降雨によって、地球上を大きく循環する。水の総量は何億年もの間基本的に変わっていないのだから、現在自分の体を構成している水はかつて海の生き物の一部であったり、恐竜の体の中にあった可能性もあり、植物だったこともあるという。自分の体内の水分子のこれまでの経歴を履歴書にしたらさぞかし興味深いだろうと思う。海中に?億年→プランクトン→小魚→尿として排泄され海水→蒸発して空へ→雨となり地上へ→地下水として5万年→汲み上げられペットボトルに詰められる→コンビニの店頭で購入され、飲まれて現在に至る・・・ってな具合だろうか。水の循環というのはダイナミックかつ深遠なものだ。

海の色が語る地球環境 (PHP新書)
作者: 功刀正行
出版社/メーカー: PHP研究所
発売日: 2009/11/17
メディア: 新書