『C.P.E.Bach フルートと通奏低音のためのソナタ集』


 J.S.バッハの次男、カール・フィリップエマヌエル・バッハのフルートソナタ集。バルトルド・クイケントラヴェルソ通奏低音エヴァルト・デマイヤーがチェンバロフォルテピアノを使い分ける。2006年録音の2枚組み。

 バルトルド・クイケンの端整な音色と丁寧な曲づくりが堪能できた。どの曲も生き生きとして自然、ものすごくオーソドックスな演奏だが、注意して聴くと緩急のつけ方、フレーズの間の微妙な間のとり方やちょっとした装飾、全てが意識され計算されていることがわかる。ほとばしる奔放さやドキッとするような色っぽさは無いが、ここはこう聴かせたい!という明確な意思が伝わってくる。確かな技術に裏打ちされているからこそできることなのだろう。

 バルトルド・クイケンは1949年生まれ、このCDを録音した2006年時点で御年56か57。大御所だ。一方のエヴァルト・デマイヤーは1974年生まれなので31か32歳。年の差25歳。会社だったら役員クラスと係長ってところか。二人の関係がどのようなのかはわからないけれど、自分がデマイヤーの立場ならカナリ張り切ると同時に緊張し、大先輩から一つでも多く吸収しようと必死になるのではないだろうか。そんな事を想像して聴くのも楽しい。ニ長調(Wq131)とト長調(Wq133)ではグレンザーとジルバーマンモデルのフォルテピアノ、それ以外はロッテンブルグとチェンバロで演奏されている。

 バルトルド・クイケンは1993年にもC.P.E.バッハのフルートソナタ全集を録音している。こちらはボブ・ファン・アスペレンと二人でオブリガートチェンバロ付のフルートソナタ10曲が収録されている。両方合わせてC.P.E.バッハのフルートソナタが網羅できる。あわせてオススメ。

Sonatas for Transverse Flute & Basso Continuo
アーティスト: Carl Philipp Emanuel Bach, Ewald Demeyere
メーカー/出版社: Accent
発売日: 2007/04/24

Complete Flute Sonatas
アーティスト: Carl Philipp Emanuel Bach, Johann Sebastian Bach, Bob van Asperen
メーカー/出版社: Sony
発売日: 1993/11/16