駆け抜けるネコは明日が見えるのか?

帰路についた夕刻、オフィス街の国道脇に一匹の猫を見つけた。「あ、ネコ…」そう思った次の瞬間、彼(彼女?)は片側4車線の国道の対岸目指して走り出した。名前を仮に「ブン太」としておこう。夕方のラッシュは過ぎていたけれど、車は決して少なくない。「あ、やばい!」身がすくむ。しかしブン太(仮名)はヘッドライトの間をくぐりぬけ、見事対岸まで走り去った。全身の力が抜け、ホッとする。まったく、心配させやがって。

駅までの道のり、あれこれ考えた。果たしてブン太はその身の危険をどこまで察知していたのだろうか?身長172cmの人間目線では、手前の車線、右側から来る車は遠く離れていて、楽勝OKとわかった。しかし向こう側の車線、左側からは数台の車が迫っていた。危ない賭けだ。自分だったらやらない。少なくとも中央分離帯で立ち止まる。ブン太目線(地上23cm、推定)では手前車線は確認できても、反対車線は中央分離帯の植え込みが邪魔で殆ど見えないだろう。エンジン音や排気ガスの匂いで分かるのかも知れないが、あいにくネコの生態には詳しくない。ここは断言しよう、ブン太はその身に迫る危険を全く感知せぬまま、ただ無防備に走ったに違いない。無事国道を渡りきったたのは運が良かったのだ、身長172cm目線だから分かる・・・。
ここまで考えて思った。毎年雪山で遭難する人がいる。冬山の危険を想定し、十分な装備と細心の注意をもってしてもだ。そんな時、雪山にいる動物達目線ではどう見えるのだろうか?「うゎ、あのニンゲン、ヤッベー、あそこ今にも雪崩が起きそうなのにー」「早く戻らないと、もうすぐ吹雪になるのに、何を考えてるんだろうねーニンゲンは?」なんて言ってやしないだろうか?
夏の海や川でもそうだ。国や地方自治体が危険回避のための監視体制やルール作りをしているにもかかわらず事故にあう人がいる。そんな時、魚や海鳥目線ではどうなのだろう?「おぃおぃ、大波が来るって、わかんないのかねぇ、知らないよー」

人知を超えた存在(神、宇宙人、ユーレイetc.)が存在していて、「あーあ、お前の勤め先、来月倒産しちゃうんだよねぇ・・・」などとは決して言ってないって事を証明することはできそうもない。ニンゲンはブン太(仮名)の無謀を笑えない。

 ↑実家にいたネコ、名前はブン太(本名)