こけしのとんかつ丼


 午後6時半過ぎに地下鉄堺筋線を恵比寿町駅で降りる。にぎやかな堺筋から一本東の筋に入り北に向かって数分歩くと、右手に大きな赤い立て看板が見えてきた。とんかつ丼・とんかつカレーのお店こけしだ。このブログによく遊びに来てくださるBARinのマスターが、休日のたびに大阪の街をウロウロ徘徊している自分にぜひお勧めと教えて下さったのだ。

 暖簾をくぐり店内に入ると、真っ赤な看板とは裏腹に落ち着いた雰囲気。テーブルの上のショーケースには数え切れぬほどのこけしが飾られている。メニューはカツどんとカツカレーのみなのだけれど、それぞれに驚くほどのバリエーションが用意されている。カツどんの場合、スタンダードな「とんかつ丼」を基本に、セパレーツ(ご飯ととんかつ別盛り)、ダブルエッグ(卵2個)、スーパー(ご飯大盛り)、ダブルとんかつ(とんかつ2枚)といったオプションがあって、さらにそれらの組み合わせができ、最上級はとんかつ2枚、卵2個、ご飯大盛りで「フルコース」と命名されている、やるなぁ。

 まずは基本からと、とんかつ丼と味噌汁をオーダーする。このお店では割り箸をよくある筒状の入れ物に大量に立てたりせずに、長方形の木のトレイにきれいに並べて置いてある。ちょっとした事なのだけれども、おもてなしの心を感じて嬉しくなる。混雑する時など補充が大変だろうな、などと考えていると湯気をたてたとんかつ丼がやってきた。

 とんかつのこんがりとしたキツネ色とトロトロ半熟卵の黄色。グリーンピースの緑がアクセントになって美しい。はやる気持ちを抑えつつ、そっと一口ハフハフハフ・・・・。卵の甘さと肉の旨み、出汁がほのかに香る、上品な優しい味に驚いた。事によると親子丼よりも優しい味かも知れない。味付けが上品で、カツの衣が柔らかで揚げすぎていないからだろう。カツどんというとガッツリ系の代表格と相場は決まっているのだが、こんな優しい味のカツどんもあるのだと初めて知った。これならダブルとんかつもいけそうな気がする。

 小皿に乗った2枚の沢庵を食べ終わると、お姉さんがやってきて沢庵のお代わりをくれた。これがこのお店の流儀らしい。お味噌汁も美味しくいただき、お腹も一杯。紹介してくれたBARinのマスターは「飽きの来ない味」と書いていらっしゃったが、まさにその通りだと思った。先日来、珍しく体調を崩していたのだが、もう大丈夫って気持ちになれたぞ。大満足でお店を出ると、通天閣が白く光っていた。

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