ワッハ上方


 立春の土曜日。青空に誘われベランダに出ると凍てつく寒さ。気を取り直して週末必須の洗濯にいそしむ。ワイシャツには糊付け、タオル類には柔軟剤。気温は低いが風が強いのでそこそこ乾きそうだ。シーフードとバジルのパスタとBeerのランチをゆっくりと楽しんだ後、部屋を出る。

 なんばグランド花月の向かいのビルに「ワッハ上方」はある。エレベーターで4階まで上がり、券売機でチケット400円を購入。受付のお嬢さんが「お土産です」と携帯のストラップをくれた。絶対使わないだろうけれど少し嬉しい。ワッハ上方の正式名称は「大阪府立上方演芸資料館」といい、オープンは1996年。落語、漫才、講談、浪曲など上方喜劇に関する資料が収集・展示されている全国で唯一の「笑いの資料館」なのだそうだ。寄席が庶民の娯楽の中心だった明治時代から現代まで、上方演芸の歴史が紹介されている。SPレコード音源の落語を聴けるコーナー、タッチパネルで昔なつかしの映像を見られるコーナー、カツラをかぶって写真撮影できるコーナーなどもある。昔の芸人さんの衣装や台本を前に、年配のお客さんが懐かしそうに見入っていた。

 フロアの一番奥にある「演芸ライブラリー」はなかなかのものだった。昭和30年代からのラジオ、昭和40年代からのテレビの演芸番組の音声や映像が数千本。市販のDVDやCD、書籍も揃っていていて、全て無料で視聴することができるのだ。季節外れと思いながらも、録音でしか聴いたことのなかった桂枝雀の『夏の医者』をセレクト。「お日ぃさんが、カーーーッ」これだよこれ!!サゲのところ、フラフラのうわばみを演じる枝雀の所作顔つきが最高だ。うーん、やはり映像はイイ。生だったらもっと良かったのだろう。実はこの「演芸ライブラリー」だけなら入場料の400円も不要、全くのタダで楽しむことができる。今は無き名人たちの芸を日がな一日味わう休日ってのも悪くないよなぁ。

 上方演芸の歴史に触れ、外に出るともう夕刻。賑わいを見せる千日前のアーケード街をぶらぶら一人歩き。先日、大阪市大正区でBARを営むマスターからお薦めいただいた立ち呑み屋さん、「赤垣屋」の暖簾をくぐる。店内はほぼ満員、おじいさんとお兄ちゃんの間に滑り込ませてもらう。アツアツのおでんと冷たいBeerで至福の一時。・・・・・帰ったら洗濯物取り込まなきゃ。