なにわの海の時空館

 抜けるような冬晴の日、地下鉄中央線の終点コスモスクエア駅で降りると、空の青と海の青が目の前いっぱいに広がった。そして吹きぬける猛烈な海風。思わずコートの襟を立て背を丸める。海沿いの道を足早に歩いていると、波しぶきが飛んできて顔に当たる。寒い!!三連休の最終日、晴天に誘われてやってきたのは住之江区南港北にある大阪市立海洋博物館「なにわの海の時空館」。2000年にオープンしたこの博物館は、海や港とともに発展してきた水都大阪の歴史をたどる”船と歴史のミュージアム”だ。



 入り口で入館料600円を払いエレベーターで地下へ。岸から離れたところに島のように浮ぶ総ガラス張りのドームへは長さ60mの地下トンネルでつながっている。トンネルを抜けドームの中に入ると目の前に巨大な何かがある。見上げると全長30mの菱垣廻船(ひがきかいせん)だ。江戸時代に天下の台所大阪と江戸とを結ぶ海運の主役であった木造の帆船を実物大に再現したものだ。大きい・・・。広角レンズの無いデジカメでは撮影不能だ(右はパンフレットからの画像、ドームの天井が見える)。なにわの海の時空館のドームは4階建てになっている。吹き抜けになっている中央部に高さ27.5mの帆を張った菱垣廻船がドンと構え、その回りに各階様々な展示がされている。この菱垣廻船は「浪華丸」といい、19979年7月に大阪湾を実際に帆走したそうだ。その時の様子、帆に風を受けて悠々と進む姿が映像で紹介されていた。ドームの2階から浪華丸に乗り込むことができる。がっしりとした造りはいかにも頼りになる感じ。木の匂いのする船内に入ると、この船にたくさんの荷を積んで江戸との間を行き来したのだなぁと実感できる。


 2時間ほどかけてゆったりと見学した後、風吹く中を15分ほど歩いてコスモタワーへ。ここには地上252m、西日本一の高さの展望台がある。「西日本一」というのに惹かれた。ここから大阪の町を見下ろそうという魂胆だ。エレベーターで51階まで上がり、その後は何やらSFチックなエスカレーターが55階まで続いている。暗いエスカレーターから展望台に上がると眩しいほどの明るさ。360度の大パノラマが待っていた。天気が良いので西は六甲山に淡路島、東は大阪の町越しに生駒山までハッキリ見える。絶景。そして大阪の町の広さを実感。延々と続くビルや建物。ものすごく大勢の人々の暮らしがそこにあることが伝わってきた。

 1995年に完成したコスモタワー。バブル崩壊で経営が思わしくなくなったため、大阪市が庁舎の一部を移転させたがその後経営破綻。現在では大阪府咲洲庁舎となり、いくつかの部局がこの建物に入っている。SFチックなエスカレーターや建物のあちこちに何やらバブルの頃の名残を感じたりもした。


 展望台の西側の窓、ふと足元を見るとなにわの海の時空館のドームが小さく光っていた。大阪の海と町とを味わった一日。それにしても寒かった〜。