大阪くらしの今昔館


 小雨降る勤労感謝の日、日本一長い天神橋筋商店街を南から北へと一人歩く。途中の回転寿司で遅めのランチ。生ビールと寿司を5皿で満足満足。この日の目当ては「住まいのミュージアム『大阪くらしの今昔館』」。今年の春頃、あるお方のブログでその存在を知り、一度行ってみたいと思っていたのだ。

 地下鉄谷町線天神橋筋6丁目駅の真上、ビルの8階から10階までの3フロアにこのミュージアムはある。8階の受付でチケットを購入し、エスカレーターで10階まで上がると大きな窓から江戸時代の大坂の街並みを見下ろせる。軒を連ねた町屋、屋根の上の物干し、火の見櫓。天下の台所と謳われた天保年間の大坂が実物大で再現してある。階段で9階に降りると今見下ろした町屋の中を歩き回ることができる。呉服屋、建具屋、小間物屋。庶民が暮らす裏長屋もある。細かな調度の一つひとつが再現してあり、タイムスリップしたような気分だ。靴を脱いで風呂屋に入って行くと、大きなスクリーンが出てきて「風呂屋シアター」が始まった。商家の奉公人たちが親元へ帰ることのできる「薮入り」の日、一人の丁稚がいなくなってしまった。心配した3人の娘が大坂の町を駆け回ってその子を探すというお話。ほのぼのとして面白い。

 8階に降りると近代の大阪を紹介するフロア。ジオラマで明治から昭和にかけての大阪市が再現してあるのだが、これが秀逸。精密でありながら、適度にデフォルメされていて、当時の雰囲気が伝わってくる。明治時代の初代通天閣とルナパーク、昭和の初めの心斎橋筋商店街、見ているだけで楽しくなる。「あの日あの家〜ある家族の住み替え物語」は昭和の初めに生まれた悦子さんの生涯がジオラマで綴られる。生まれ育った空堀商店街の理髪店、戦後住宅難時代の「バス住宅」、そして高度経済成長時代の鉄筋コンクリート造りの団地。時代とともに街が変わり、住まいも変わる。そこに暮す人たちの生活も変わっていくのだなぁとしみじみ思った。

 ふと我が身を振り返ると、今住んでいる大阪のマンションは生涯で10番目の住まいだ。幼児期を過ごしたビルには共同の物干しがあった。小学校に通った借家は今はもう無くなってしまった。親父がローンで買ったマンションはピカピカで嬉しかった。学生時代の一人暮らし、東京の三畳間での生活、新婚時代の賃貸マンション・・・。その時々のあれこれが当時の住まいとともに思い出される。街は変わり、人も変わる。出会った人、別れた人、住まいの今昔館で自分の今と昔を想う、こんな休日もたまには良いものだ。