大神山神社〜大山寺


 鳥取県西部にそびえる中国地方最高峰、大山(だいせん)。その麓にある大山寺と大神山神社に行ってきた。この三連休は病気療養中の弟に会いに行ったのだが、彼の調子が良く、心配していた雨も降らないので、一緒に彼のお気に入りの散策コースへ行くことにしたのだ。

 米子市内から車で30分。ふもとの駐車場に車を停め、坂道を登りはじめた。道の両側には飲食店や古い旅館、みやげ物屋などが並ぶ。賑やかで活気あふれるとまでは言えないが、寂れているわけではなくい。かなりキツイこう配の坂が延々と続くのだが、店舗脇の空地に駐車してあった軽トラのボディーにはタイヤの代わりにキャタピラがついていた。冬はかなりの積雪がある地域なので、この坂を上り下りするにはキャタピラが必要なのだろう。5分程坂道を登ると大山寺の山門に突き当たった。門をくぐらず、左手脇の山道へと進む。この道は大神山神社へと続くのだ。木々の間を歩くのは気持ちのよいものだが、これがまたキツイ坂なのだ。先の台風12号の影響だろうか、参道の敷石があちこちはがれていて、応急的に治した跡が見受けられる。汗をハンカチで拭きながら一歩一歩踏みしめ、ゆっくり登っていく。何度も来ている弟は余裕の歩みで、とても病人とは思えない。喜ばしいことだが、負けてなるものかという気になってくる(笑)。

 およそ30分坂道を登り続けたところに大神山神社はあった。門をくぐり、さらに石段を登って行くと急にあたりが開け、重要文化財に指定されている奥の宮がその姿を現す。19世紀初頭に建てられた今の建物は日光東照宮などと同じ権現造りだそうだ。しかし、東照宮のきらびやかさとは随分違い、粉を吹いたような灰色は枯れた渋さを醸し出している。参拝、弟の回復を祈願した。

 登ってきた道をゆっくり降り、途中で脇道に抜けると大山寺。本堂の横に小さな鐘楼があり「心を落ち着け願いをこめておつき下さい」と書かれている。弟は慣れた様子で綱を手に取り、見事鐘をついて見せた。「ゴ〜〜〜〜〜ん」と鳴って、その後さらに「ン〜んーーーーーん ・ ・ ・ ・ 」と余韻が続く。上手いものだ。間近で聴く鐘の音は、音そのものに加えて余韻や空気の振動が全身で感じられる。身に染みるとはこういうことか。ならって自分もついてみた。実はこれまでお寺の鐘をついたことはない。初めての鐘つき、少し緊張するが幸い他に参拝客はいない。心を落ち着け、願いを込めて鐘に向き合った。一回、二回と前後にゆすり、三回目でつく。「ゴ〜〜〜〜ん」上手く行ったような気がする(笑)。

 駐車場に戻り、缶コーヒーで一服。およそ1時間半の山道は全身に心地よい疲労感を与えてくれた。空を見上げると低い雲が足早に流れていく。雨が降らなくてよかった。