新幹線さくら号


 広島に行ってきた。5年ぶり3回目の広島出張(先日の中国と同じだ!)、10時過ぎに事務所を飛び出し、新大阪駅へと向かった。 新大阪の券売機で見慣れぬ文字が目に飛び込んできた。『新大阪発鹿児島中央行さくら551号』。「おぉっこれが先月開通した九州まで行く新幹線か!」と理解するまでしばし時間が必要だった。幸い空席があったので乗ってみることにした。

 ホームに上がると清掃中のさくら号の姿があった。基本的には馴染みのN700系の車両なのだけれど、薄水色に塗装されたボディーに青と金のライン。のぞみ号の白地に青ラインから受けるハツラツとしたイメージと比べると上品で大人しい。清掃が終わり車内に入っていくと、のぞみ号とは随分違っていた。通路をはさんで左右2列のシートは金茶色でゆったりとデラックスな印象。車輌前後の自動ドアのある壁面と荷物棚の一部は木目調になっていて、落ち着いた雰囲気が漂う。なんだか少しデラックスじゃん。惜しいのは左右の壁と天井はのぞみ号同様クリーム色のプラスチック。どうせなら全部木目調か濃い目のベージュにでもしてしまえば、いかにも「上質な空間」っぽくなるのに、などと勝手な事を考える。

 新大阪を出てしばらくすると小雨が降ってきた。広島までおよそ1時間半、ゆったりシートと心地よい振動に揺られていたら、ついうとうとしてしまった。花粉症の薬の影響もあるのだろう。広島に到着する前に目が覚め、ふと目についたのが座席の枕の横の通路側についている小さな取っ手。歩く人がつかまったり、座席を回転させるのに使うのだろうけれど、そこに点字で座席番号が書かれていた。いかにも日本人らしい細やかな心遣いだなぁと嬉しい気持ちで列車を降りた。

 以前九州に行ったとき思ったのだが、JR九州の車両は色とりどりでとても派手だ。形も個性的というか、デザインを主張している。在来線も特急も、ナゼか迫力があるのだ。そんな車輌たちの待つ九州に向かう薄水色のさくら号は少し頼りなさそうで心配だ。いっその事その名の通り桜色、いやもっと派手なピンク色にしてしまおうという意見は出なかったのかなぁ?そんな事を考えながら、はるか鹿児島を目指すさくら号を見送った。