『パリより愛をこめて』


 ジェームズ・リース(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は駐パリ米大使の補佐官。チェスの名手でもあり、中国語はケンブリッジの2級の実力というエリート大使館員だ。しかし彼はCIAのエージェントでもある。エージェントとは言っても盗聴器の設置や車のナンバープレートの付け替えといった雑事をこなす見習いエージェントの身で、いつかは「ジェームズ・ボンド」のような活躍をしたいと願っていた。そんな彼にとうとう極秘作戦要因としての指令が下りた。特殊任務でパリにやってくるエージェント、チャーリー・ワックス(ジョン・トラボルタ)と行動を共にし補佐しろ、というのがCIAからの指令だ。相棒となったワックスはスキンヘッドにヒゲ面、いかにも危なそうな風貌で、実際言葉より先に銃が出るタイプ。ジェームズは戸惑いながらもワックスと共にテロ集団と戦うことになる・・・。

 タイプの違う二人が活躍する設定は楽しい。エディー・マーフィの『48時間』がまさにそのタイプの映画だったし、水谷豊の『相棒』シリーズもそうだ。昔むかしのテレビドラマで『噂の刑事トミーとマツ』なんてのもあったっけ。二人の個性が極端で、かけ離れているのがミソ。観客の多くは二人の中間に位置する「普通の」人達なので、ストーリーの流れの中で一方に共感したり、他方に感情移入したりする。観終わった後、最終的に「Aがヨカッタなぁ」「俺はBの方だな」なんて志向が分かれるのも楽しい。

 この作品、興行的には大成功とはいかなかったようだ。確かにテロという重いテーマにも関わらず、どこか薄っぺらな印象が拭えない。ジェームズの内面の葛藤や成長という点も十分に描ききれていない。派手なアクションも全体の流れのなかでのポジショニングがチグハグで、散発になってしまっている。しかし、全編を通じワックス役のトラボルタの存在感は大きかった。大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』から30年以上。まずは「え、コレがあのトラボルタ!?」と驚いてしまった。当時のシャープな二枚目は見る影もないのだが、役者としては着実にキャリアを重ねてきたのだ。アクションシーンは少々辛そうだったけれど、『サタデー・ナイト・フィーバー』の大ヒットを知っている世代としては、久々のトラボルタの雄姿に出会えたというこの一点でウレシかった。あと、ジェームズの恋人、キャロリン役のカシア・スムトゥニアクの笑顔も二重丸だ。

パリより愛をこめて Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

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