葉書


 勤め先を数年前に退職した大先輩から葉書が届いた。自分と同様、大阪での単身赴任を17年間も勤め上げた先輩だ。いただいた年賀状に近況を知らせる返事を書いたのに応えての一通だった。

 一人暮らしの身に心遣っての言葉や仕事への気遣いの言葉が見覚えのある懐かしい文字で綴られている。手書きの葉書の暖かさが身にしみた。自分は子供の頃からの悪筆で筆不精なのだが、手書きの葉書は本当に良い物だ。大阪でかつて通った飲み屋やうまいもん屋を紹介するよ、との言葉には大いに元気づけられた。

 いつか自分も第一線を退き、後進に道を譲ることだろう。そんな時、自分もこんな葉書を後輩に書けたらよいな。企業という運命共同体の中、先輩から受けた恩義は後輩に返すのが筋だと思う。先輩へお返しすることは親の恩同様、どう考えても不可能だから。