道具屋筋商店街


 師走になり年末年始のことについて、あれこれ思いを巡らすことが多くなった。仕事の上でも忘年会、大掃除、取引先への年賀状、新年会…通常のビジネス以外のことを考えなければならない。新年の挨拶で取引先を訪ねるのは例年の事。今年も宜しく、昨年はどうでしたか?「虚礼廃止」の考え方も理解できなくはないが、今年も共に頑張りましょうと気持ちを一つにする機会。普段足が遠のいていた取引先を改めて訪問する口実にもなる。良い習慣だと思っている。そんな時、「まぁどうぞ」と日本酒で乾杯するのが通例だ。

 「お猪口が少ないんです…」先週、事務所の女の子からこう言われた。年始挨拶のお客さんを迎えるにあたり、お猪口が少ないのだという。今あるものを見せてもらうと、形も色もバラバラなお猪口やぐい飲みがいくつか…。これでは新年を迎えられてもお客さんを迎えられない。聞けば難波に「道具屋筋」というのがあるという。よし、お猪口は任せてくれ。

 休日の昼前、地下鉄なんば駅で下車し、歩くことしばらく。なんばグランド花月の前を通り過ぎると道具屋筋の入り口が見える。「千日前道具屋筋商店街」というのが正式名称。食いだおれの街大阪を支える調理器具や厨房機器を販売する商店街。その歴史は明治時代に遡るという。休日ということで観光客も多いのだろう、結構な賑わいだ。椀や皿など食器はもちろん、コンロや調理台、店の暖簾やのぼり、伝票などを売る店もある。たこ焼きを焼く機械やお好み焼きの鉄板やコテを専門とする店もあった。さすが大阪!

 そう言えばお猪口を買うのはこれが初めてだ。物の良し悪しも全く分からないが、そんな事は構わない。宴席ではないので華美である必要はない。相手は酒を飲みに来るのではないのだから、できれば小ぶりな方が良かろう。清潔感のある白と青の円錐形のお猪口を探したら、これが意外と少ないのに驚いた。円筒形で茶色や黒の渋めのものはいくらでもあるのに…。3軒目でやっと見つけたが、在庫は無くて取り寄せてもらうことになった。まぁよかろう、これで新年のお客さんを迎えられる。