中華そば「豆天狗」

 飛騨の小京都、高山。古い町並みが保存され、春と秋の高山祭には、全国各地から大勢の観光客が訪れる。地酒、塩煎餅、五平餅にみだらし団子。高山の名物は多いが、ラーメンも名物だ。高山の町を歩いていると、そこかしこにでラーメン店をみかける。高山はラーメンの町でもあるのだ。  

 『豆天狗』は創業昭和24年、中華そばの老舗。ラーメンブームのはるか昔から、行列のできる人気店であり続けている。引き戸を開けて店内に入ると、普通のラーメン店の匂いとは明らかに違う、魚介系の香ばしい香りに包まれる。ダシに使われる煮干だろう。「豆天狗」での一杯は、この香りにウットリするところから始まる。いつもたのむのは中華そば大盛り。そして夏ならビールかな。待つことしばし、湯気をまとって現れた中華そば。具材は薄切りチャーシューとメンマ、そして飛騨ネギ。高山ラーメンに共通の細目の縮れ麺は、スープがよくからむ。ズズズズッとすすると、少し固めの茹で上がり、歯ごたえとのど越しが心地よい。醤油味のサラッっとしたスープは、ダシの旨みが強すぎず弱すぎず。実に味わい深く、最後の一滴まで飲み干さずにはいられない。 

 昔の店舗が改装されて、驚くほど綺麗になった。カップ麺が販売されたり、インターネット通販でも購入できるようになったりもした。中部国際空港に支店もできた。カウンターの中でいつも寡黙に麺を茹でている二代目は、ナカナカしたたかなビジネスマンでもあるのだと感心する。

しかし高山は遠い。高山に行くたびに「豆天狗」には必ず立ち寄るが、年に1度行けるか行けないかだ。大学生だった頃からかれこれ25年以上、めったに行けないけれど、お気に入りのおいしい店No.1だ。

豆天狗 本店

食べログ 豆天狗 本店