『突撃』


 1957年公開のアメリカ映画、監督・脚本は『2001年宇宙の旅』や『時計仕掛けのオレンジ』『フルメタル・ジャケット』のスタンリー・キューブリック第一次大戦下の1914年、ドイツ軍と交戦中のフランスが舞台。


 硬直した戦況を打開すべく、ダックス大佐はドイツ軍の拠点「アリ塚」を48時間で落とすよう命じられる。ドイツ軍の守りは堅く、甚大な被害が予想されるためダックスは抗議するが、現地入りしたミロウ将軍はそれを聞き入れない。ちなみにダックス大佐を演じるのはカーク・ダグラス。マイケル・ダグラスのお父さん、ルックスがそっくりで、演じるキャラクターもよく似ているので驚いた。さて、予定通りに作戦は実行されるがドイツ軍の反撃は凄まじく、多くの犠牲者を出したにもかかわらず作戦は失敗する。さて、その失敗の責任をどう取るかが問題になる。新聞・政治家から軍本部を守るためのスケープゴートにさせられたのは3人の兵士、彼らの命がその代償となるのだ。ダックスは部下の命を守ろうと必死で動くのだが・・・。


 第一次大戦を特徴付ける塹壕戦、地面に掘られた狭い通路に大勢の兵士が潜む。そこから出て前進することは敵の的になる事を意味する。この映画の中でも、「アリ塚」にたどりつくまでに35%の兵が命を失い、最終的には半数以上の兵が死ぬ事を前提として作戦が立てられている。当時の陸軍歩兵というのはそういうものだったのだろう。指揮官の吹くホイッスルを合図に塹壕を飛び出し「突撃」する兵士達。砲弾が飛び交い、そこかしこに土煙が上がる。横たわる戦友の死体を乗り越えて後から来た兵士が進む。そんな戦場の有様がリアルに描かれる。しかしこの映画、ドイツ軍との戦闘シーンは前半の一部のみ。3人の兵士の運命を左右する軍法会議とそれ以降のやり取りがメインとなる。そこにはドイツとの戦いではない、地位と肩書きをめぐってのフランス軍人同士の戦いがある。3人の兵士の命はその駆け引きのネタでしかない。戦争の「不条理」を描くのにこういった方法もあるのかと感心した。ラスト近くで登場するドイツ人歌手(クリスティアーヌ・ハーラン)の歌声に涙する兵士達の姿が印象的だ。

突撃 [DVD]

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