神戸赤萬

 プロフィールにも書いているが、実は餃子好きだ。見た目は同じでも、具材は千差万別、皮も厚いのから薄いのまでこれまた千差万別。焼き餃子の場合は焼き具合が各店異なる。そして全体の食感としてはパリッと派、ジューシー派、モッチモチ派などもうバラエティーに富んでいる。蒸し餃子、水餃子、揚げ餃子と食べ方もいろいろ。ラーメンも各店個性があっておもしろいと思うが、パッと見はほぼ同じなくせに実は奥が深いという、餃子の魅力は深遠だ。

 神戸三宮に餃子専門店「赤萬」(あかまん)という店がある。初めて連れて行ってもらったのは20年近く昔のこと。小ぶりな店内は15人程で満員になってしまう。ここのメニューは餃子とビール、それだけ。餃子は焼き餃子で1人前7個。サイズは標準よりほんの少し小さいくらい。普通の厚さの柔らかな上品な皮に、生姜の風味のよく効いた具が多すぎず少なすぎずの適量包まれている。これを焦げ目がつくほどよーく焼いた後、たっぷりの水で蒸しあげる。出来上がりは柔らかで口当たりのよい、とても上品な焼き餃子なのだ。この餃子を味噌ダレでいただくのが神戸流。甘めの味噌ダレにラー油を混ぜると、包み込まれるような優しさの中にピリリと辛い厳しさが感じられる、独特のタレが出来上がる。これのタレをたっぷり絡めてパクリといただくと何とも言えない至福感が口の中に広がりビールが進む。

 1995年の阪神淡路大震災の後しばらくして訪れてみたら営業しておらず、ひどくガッカリしたことを覚えている。今回久しぶりの神戸出張にあたり、赤萬どうなったかな?と思い出し、インターネットで検索してみたらなんと三宮の店がヒットする。当然行ってみた。店内のレイアウトは昔とそっくり。夕方6時前だったがほぼ満席。メニューはやっぱり餃子とビールのみ。カウンターの中のお母さんに「地震の後ってやってました?」と聞くとやはりしばらくの間店を閉めていて、数年前に建物を建て直して再開したという。10年以上ぶりに訪れることができて感涙。一日の疲れも吹っ飛んだ。神戸へおいでの際はぜひ一度お試しあれ。