『ブラインドネス』


 2008年秋公開の映画『ブラインドネス』(Blindness)を見た。医者の妻役のジュリアン・ムーアが主役、日本の伊勢谷友介木村佳乃はとても重要な役どころだ。

 ある日突然奇病が発生する。眼球に問題はないのに失明する。人から人へとうつる感染症なのだが原因は不明。物語の設定は以上、極めてシンプルだ。感染は広がり、ジュリアン・ムーアや伊勢谷友介木村佳乃らは非日常の世界で極限状態を経験することになる。グロテスクな表現も多く、好き嫌いは分かれるだろうが、考えさせられる映画だった。

 目が見えるという事は現在の人間社会の大前提だ。仮に今、この映画のように世界中の人の目が見えなくなったら・・・。家から一歩も出られないし、家の中でも何もできない。インフラは全く機能しなくなり、全ての工場がストップ。政治も経済も警察だって機能せず、大混乱と奪い合い。事故や爆発があちこちで起こり、原発なんかどうなるのだろう?

 大混乱の後、生き残った人類の生活を想像してみる。電気もガスも無し、火は何とか使えるだろうか。電車も車も自転車だって乗れないから全員が杖を突いて歩いている。農業はなんとかできるかもしれないが、大きな牛や豚を育てて殺して食べるのはムリだろう。魚を釣ることはできそうだが、針や糸や竿を手作りしなきゃならない。そう、工業生産は無理、産業革命以前の生活水準に戻るわけだ。狩猟も難しい。木の実を取ったり葉っぱを食べたり・・・原始時代に近いかも。一方、嗅覚や聴覚もしくは別の器官や能力が物すごく発達しない限り、犬より弱い動物になる。当然オオカミや熊やトラにとって最高のごちそうだ。環境破壊がストップし、それらの肉食獣が激増したらカナリの高確率で絶滅かも。目って自分にとっても、人類にとっても大切だなぁと改めて思った。
ブラインドネス スペシャル・エディション(初回限定生産2枚組) [DVD]