『天使と悪魔』


 『天使と悪魔』 ダン・ブラウン
 ダン・ブラウウンの『天使と悪魔』を読んだ。『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ第二弾として映画化されたが、原作はこの『天使と悪魔』の方が3年も早く、ロバート・ラングドンシリーズの第一作にあたる。

 ヴァチカンとローマの街を舞台に繰り広げられるドラマ。ラングドンがその頭脳を武器に命がけで謎を解き明かしていくという展開は『ダ・ヴィンチ・コード』と共通だ。そして、大学の講義よろしく、人類の悠久の歴史を読者に紹介したかと思うと、次の瞬間は息もつかせぬアクションシーンが繰り広げられるという、緩急メリハリ、目まぐるしさも『ダ・ヴィンチ・コード』とよく似ている。文庫本で上中下三冊、ラングドンアメリカ、スイス、イタリア、そしてヴァチカンを飛び回るのだが、実は24時間のお話だ。

 少し前に戯曲について書いた。戯曲では役者がソレらしく演じてくれるので、登場人物の詳細について、言葉を尽くし説明しなくてもよい。そのため舞台ではなく本で戯曲を読むと登場人物のキャラクターが定まらず辛い、と書いた。正反対だったのがこの『天使と悪魔』だ。『ダ・ヴィンチ・コード』の映画を見ているので、ロバート・ラングドントム・ハンクス。もうキャラクターが出来上がっている。目に入るセリフ、トム・ハンクスが叫んでいる。シリーズものの強さを感じた。

 さてこの『天使と悪魔』、宗教と科学という、大きなテーマに真正面から挑んだ意欲作だがエンターテイメント性も十分ある。2日半かかってしまったが、できれば家に閉じこもって一気に読み切りたい作品だ。印象的だったセリフを一つだけ記そう。「神はまちかいなく存在する、と科学は語っている。自分が神を理解することは永遠にない、と私の頭は語っている。理解できなくていい、と心は語っている」一つめは分からないが、二つめと三つめにとても共感する。

天使と悪魔 (上) (角川文庫) 天使と悪魔 (中) (角川文庫) 天使と悪魔 (下) (角川文庫)
作者: ダン・ブラウン
メーカー/出版社: 角川書店
ジャンル: 和書