春の法隆寺


 奈良、斑鳩法隆寺に行ってきた。聖徳太子推古天皇が607年に建てたお寺で、世界遺産にも認定されている。春の昼下がりは寒からず暑からず、空は青く風は爽やか。前日に耳鼻科で花粉症の薬をもらってきて本当にヨカッタ。

 駐車場から参道を進み、南大門から境内へ。ここを訪れるのは学生時代の一人旅以来なのだが、前回の記憶はかなり曖昧だ。こんな風だったかなぁ?などと考えながらゆっくりと歩く。国宝の中門、エンタシスの柱と金剛力士像が力強い。廻廊脇の入口でチケットを購入し廻廊の中へ入ると、目の前に日本最古と言われる五重塔、その右手には金堂が立っていた。金堂内部に安置された有名な釈迦三尊像と再会。意外と小さいのだが、ズッシリとした質感が伝わってくる。前に来たときにも同じように感じた事を思い出した。同じく金堂内部に描かれた壁画の観音様を拝む。教科書で見た事のある、穏やかな微笑みが薄暗い中に浮かび上がる。建立当時は極彩色の鮮やかさで、堂内を彩っていたのだろう。レプリカであるのが残念だ。

 大宝蔵院では有名な玉虫厨子を観る。こちらは頭の中のイメージよりずっと大きい。居合わせた老齢の紳士も「こんなに大きかったかのう?」とつぶやいていたから、そう思うのは自分だけではないようだ。宝蔵院中央には百済観音像。2mを越す長身の観音様はほっそりスマートだ。奈良時代に作られたという東大門からまっすぐ続く道を東へ進み、同じく奈良時代聖徳太子を偲んで建てられたという夢殿へ。廻廊とお堂に四方を囲まれた空間中央に佇む正八角形。静謐で穏やかな中にも、侵しがたい存在感が感じられた。


 参拝する観光客は多すぎず、少なすぎず丁度良い賑わい。修学旅行と思しき高校生の一団を見送った後は、自分のペースで参拝をすることができた。痛めた左足をかばいながら、およそ2時間。ゆっくりと巡ったがやはり少々負担がキツかったかなと反省する。実はこの日奈良へ来たのはお葬式があったため。せっかくだからと立ち寄った古刹にて、亡き人と飛鳥の昔を想った春の午後だった。