二足歩行


 骨折した左腓骨をピンとワイヤーで固定する手術を受けてから10日、無事退院して久しぶりに自宅に帰ってきたのが1週間前の日曜日。術後の経過は順調で、左足に体重をかけることと、ぬらすこと以外はOK。早速、翌月曜から出勤することにした。通勤には電車を使うのだが、早い時間ならば確実に座れるので、松葉杖での電車通勤を敢行したのだが、これが結構キツかった。

 自宅から勤務先まで、普段は1時間少々で通っていた。駅まで歩き、その後電車を2本乗り継ぐのだが、同じコースを松葉杖での通勤となると状況は変わってくる。初日の月曜、自宅から最寄り駅まで通常7分かかるところ、倍の14分と見ていたのだが、これが全く甘かった。道半ばにして腕と胸の筋肉が悲鳴を上げ、手のひらと脇がこすれてヒリヒリしてきた。息切れして、何度も立ったまま休憩しなければならず、実際に要したのは約4倍の30分。ドアツードアの全工程では普段の倍の2時間だった。左足の代わりとして不慣れな両腕が頑張ったわけだが、足というのは何と力強く頼もしいものかと、我が体の一部ながらその有りがたさを痛感した。

 事務所においても、やはり不自由だった。松葉杖があれば、移動はできるのだけれど、両手がふさがっているので何かを持って動くことができない。プリントアウトした書類1枚取るのに人の手を借りないといけないのはやはり辛い。ランチはお弁当を買ってきてもらい、来客の際は、応接室まで誰かにノートと資料を持ってきてもらわねばならなかった。まぁ、それでも実際に皆の顔を見ながら仕事ができるのは嬉しいものだ。勤め先の皆に感謝したい。そして、駅のバリアフリー化の重要性も身を持って体験した。いつも利用する乗り換え駅の各ホームにエレベータが設置されたのは2年ほど前。本当にありがたかった。

 そんな一週間を何とか乗り切って、昨日は通院し診察を受けた。結果は良好。抜糸をしてもらい、松葉杖無しで歩くことも許可してもらえた。診察室を出るとき、恐る恐るの最初の一歩。そーっと左足に体重をかけてみる。・・・痛みはなかったが、やはり上手く歩けなかった。病院から借りていた松葉杖を返却し、久々の二足歩行を始めた。左足の筋力は落ちているし、足首は固まって可動範囲が狭い。徐々に慣らして勘を取り戻そう。何てことはない、今まで普通にやってこれた事。すぐに思い出せるはずだ。