きびだんご


 倉敷に行ってきた。倉敷には高校の修学旅行で来たことがある。美観地区を散策して、大原美術館を見学、アイビー・スクエアで昼食を食べたっけ。今回は仕事で来たので観光はナシ(涙)。新倉敷駅から車で10分程の工場に、新製品の試作の立会いと打ち合わせのための訪問だった。

 無事仕事を終え、新倉敷駅で目に付いたのが「きびだんご」。岡山県桃太郎伝説の地。きびだんごは地元名産のマスカットや桃と並ぶ岡山県のお土産なのだ。単身赴任の身なので、自分用に小さなのを一つ買い求めた。廣榮堂というお店の「元祖きびだんご」のパッケージは絵本作家の五味太郎氏のイラストが描かれている。一つひとつのだんごを包む紙にも桃太郎や鬼、サル・キジ・イヌのイラストが描かれている。包みを開けると、淡い黄色の可愛らしいだんごが顔を出した。ほおばると柔らかいお餅の優しい甘さが口中に広がった。

 実は自分にとって、きびだんごは「おばちゃんの味」だ。岡山市に父方の伯母が住んでいて、来る時は必ずきびだんごをお土産に買ってきてくれた。子供の頃はとても嬉しく、弟と争うように食べたことを覚えている。「一人三個までにしなさい!」見かねた母が大声を出すのが通例だった。久しぶりに食べたきびだんごの懐かしい味、少し幸せな気分になれた一日だった。