台風

 今年は台風が少ない。新聞によると9月末までに沖縄に接近した台風は1つだけで、これは統計を取り始めた1951年以来最少記録、北海道・本州・四国・九州に接近した台風は2つだけでこちらは最少タイ記録らしい。おぉ、そういえば台風来てなかったなぁと気がついた。

 台風は恐ろしい。子供の頃、台風の接近に備えて慌しく準備していた両親の姿が思い出される。庭にあった植木鉢やバケツやアレコレを家の中に取り込み、懐中電灯を用意していた。雨戸が閉められ暗くなった室内で「台風接近」のTVニュースを見て「コレハ、タイヘンナジタイナノダ」と思った。夜遅くに、ビュービュー唸っていた風の音がピタリとやむと「台風の目に入ったのだ」と親が教えてくれ、台風に目があるのかと不思議に思った。

 農業用資材を商う知人がいるのだが、自分の担当する地域に台風が来た年と来なかった年とでは売上が大きく異なるという。吹き飛ばされたり穴のあいたビニールハウスの補修が彼らにとって特需となるらしい。床下浸水、床上浸水、高波に土砂崩れ。地震でもそうだが、人間が地球の表面にコツコツ築いてきたものを自然の力はいとも簡単に壊してしまう。その結果大きな損害を受ける人もいれば利益を得る人もいるのだが、全体として見れば人間は壊れたものをまたコツコツと地球の上に作りなおす。有史以前から脈々と繰り返されてきたこの営み。人間は何ともケナゲな生き物なのだ。

 日本への台風の接近が少ないのはエルニーニョ現象の影響らしい。世界に異常気象ををもたらすエルニーニョ、日本の冷夏暖冬の原因といわれるエルニーニョ、またお前か!!今年は伊勢湾台風から50年目の年。当時の被害を思えば台風が少ないというのはとても喜ばしいことなのだが、これも異常気象の一つと思うと空恐ろしい。