『エデンの東』


 ジェームス・ディーンの初主演映画『エデンの東』を観た。1955年公開のこの作品でジェームス・ディーンはアカデミー賞の最優秀主演男優賞にノミネートされ世界中から注目を浴びたのだが、同年9月、交通事故で帰らぬ人となった。夭折した伝説のスター、彼の出演作を観たのは初めてだ。

 時は第一次大戦の頃、アメリカはカリフォルニア州サリナスという街が舞台。厳格な父親と優秀で礼儀正しい息子アロン、双子の弟キャルはアロンとは正反対の不良少年、この3人の家族に兄アロンの恋人アブラが加わって物語は進む。ジェームス・ディーンが演じるのは当然やんちゃな弟キャルだ。顔も知らない母親、父と息子の葛藤、そしてカインとアベルではないが、兄弟の争い。「アロンは?」「アロンの番人じゃないよ」こんな台詞も出てくる。相手を傷つけ自分も傷ついく・・・。これらを通じて家族の愛と自分自身とを見つけるという青春映画。古臭さを感じさせない、良い映画だった。

 映画の前半でキャルが父親に叱られるシーンが新鮮だった。テーブルをはさんで座る父と息子。父は聖書を読んで聞かせ、キャルにも読ませる。半分ふてくされながら聖書を読むキャル・・・・。アメリカ人ってのはこんな風に息子を叱るのだ。まぁ、この父親はカナリ厳格で、極端な例なのかもしれないが、叱り方としては少しずるい気がする。やらかした事がどうだったかはもう問題でない。言い訳無用の状態で神の前に引っ立てられるのだから、叱られる方としてはたまらない。一方、神の名において叱るのだから、その実叱る方も矜持が問われるのだろう。

 アメリカと日本、1950年代と現代、置かれた環境は随分ちがうけれど、共感できる部分もあった。どこかで見たことのあるジェームス・ディーンのモノクロ写真、少し悲しげで何かに怯えるような眼差しは、父親の愛を求めるキャルの眼差しだったのだ。

エデンの東 [DVD]

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