『タクシードライバー』

 1976年アメリカ映画「タクシードライバー」を観た。主演のロバート・デ・ニーロは当時まだ30そこそこ。そして彼の運命を大きく変える幼い売春婦を当時13歳のジョディー・フォスターが演じている。カンヌでパルム・ドール受賞、この作品の影響でレーガン大統領が銃撃されたという、当時の世界に大きな影響を与えた作品だ。

 デ・ニーロ演じるトラヴィスは"ムーンライト"のタクシードライバー。"ムーンライト"というのは夜6時から朝の6時まで働くいわゆる夜勤、お客は「売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬売人」トラヴィスに言わせれば「クズ」ということになる。「奴等を根こそぎ洗い流す雨はいつ降るんだ?」決して社交的ではないトラヴィスは日記に思いを書く。そして別の日の日記には「もうこれ以上我慢できん」となり、最後は「あらゆる悪徳と不正に立ち向かう男がいる、俺さ」となる。鬱積するイライラと閉塞感がクライマックスのカタルシスへつながる。

 思った事をもう二つ書こう。一つはタクシー会社の面接のシーン。トラヴィスが海軍の出であることを告げると、あまり好意的でなかった面接官の顔つきがみごとに変わった。ネイビズム顕在なりといったところだろうが、現代日本人には新鮮なやり取りだ。もう一つは、13歳のジョディ・フォスター。大スターとなった今の彼女には無いあどけなさも確かにあるが、それ以上に今の彼女につながるのであろう、見事な演技力に大女優の片鱗が見える。あと非常に有名な「俺に用か?」のシーンは確かにスゴイ。

 さて、この映画、評論はされ尽くされているだろうからゴチャゴチャ書くのは控えて一言でいうなら、「頭では共感できないが、魂が揺さぶられる映画」だ。