『フェルメール全点踏破の旅』

 「真珠の耳飾りの少女」「青衣の女」「真珠の首飾り」などで人気の高い17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメール。異論もあるが、この人の作品は現在世界に37点しか残っていないそうだ。37という数字、その気になれば全点見て回れるのではないかと思い、「巡礼」に望むファンもいるという。この本はフェルメールの作品を観ることだけを目的としてわずか3週間の間にドイツ、オーストリア、オランダ、イギリス、フランス、アメリカの6カ国14都市をめぐる旅の記録。コンパクトな新書版ながら、豊富な写真に彩られた綺麗な本、書店で手に取り迷わず購入した。

 特にフェルメールファンではないが、この本で紹介されているフェルメールの作品のうち、半数以上に見覚えがあった。もちろん、実物を観たことはないはずなので、テレビや書籍、Webページなどで目にしたのだろう。画集として観るには小さすぎるけれど、一つのテーマをもった旅行記として読むととても味わい深い。フェルメールの作品がどのような美術館にどんな風に展示されているのかが丁寧に紹介されていて、フェルメールを知らない人も、フェルメールファンも楽しめる一冊だ。

 ところで読み終えてから気がついた、僕がこの本に惹かれた理由の一つには「全点踏破」という点があるのだろう。昔から、気に入った人の作品は全て味わいたくなってしまうからだ。今まで「全点踏破」しているのは音楽ばかりだが、Queen、Tulip、ショーロクラブ寺井尚子(後の2人は現在進行中)。先日読んだ松岡正剛の『多読術』の中で、読書に貴賎はないが「全集読書」は別格だ、という記述があった。そのアーティストの全てを味わい尽くす、本であれ、音楽であれ、絵画であれ、それは別格の楽しみなのだろう。

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)
作者: 朽木 ゆり子
メーカー/出版社: 集英社
ジャンル: 和書