大須演芸場


 名古屋中区の大須観音駅。観音様のすぐ近くに小さな寄席がある。「なごやおわらいよせ 大須演芸場」。大須は大好きな街でよく訪れるのだが、そのついでにチョイと寄っては一時楽しませてもらっている。落語、漫才、マジックに曲芸…いろいろな出し物が演じられる。そんな大須演芸場が今月末で閉鎖されるというニュースを知ったのはつい先日。賃料の滞納で、強制執行となるそうだ。これまで何度も閉鎖の危機があったのだが、何とか乗り越え存続してきたのだが、いよいよらしい。それもそうだと思う、いつ行っても客席はガラガラ。自分を含めてお客は3-4人というのが普通だったからだ。

 そんなことで1月最後の日曜日、久しぶりに大須演芸場に行ってみた。この日は「名古屋おもてなし武将隊」の貸切公演があり、一般の公演は午後3時から。すぐ近くにある餃子の名店「百老亭」で腹ごしらえをして大須演芸場に向かうと、何と驚いたことに行列ができている。こんな事は初めてだ。

 何とか席を確保し、ドキドキワクワク開演を待つ。いつもは1日3公演入れ替え無しなので、開演中にぶらりと入り、同じ演者が出てくると「あ、一周したんだ」と帰るパターンなので、ここで「開演を待つ」というのは実は初めてなのだと気付いた。開演間近、ふと振り返ると客席は2階席まで満席で、立ち見のお客さんも大勢。2階席が有ったのだと今さらながら気づいた。

 この日は快楽亭ブラ雲(ブラウン)の落語に始まり、かつら竜鶴の三味線漫談、ひと:みちゃん(艶歌)、チャレンジャー(漫才)、室井駿之介(講談)、天魔(マジック)などなど多彩な演目が全部で12組。満席の客席を大いに沸かせてくれた。一番気に入ったのは、名古屋在住の落語家、雷門福三による創作落語。名古屋に昔からあるデパート4M(松坂屋三越名鉄丸栄)が、高島屋名古屋駅進出に右往左往する噺。デパートを擬人化して語るのだけれど、それぞれのキャラクターが我々一般人の抱くお店のイメージにピッタリ。地元の人をニヤリとさせるネタが随所にちりばめられているのも心憎い。とても楽しかったので、機会があったらまた聞きたいと思った。最後に登場した快楽亭ブラックの「初天神」で幕が下りたのが6時半。3時間半楽しませてもらって\1,500は超お値打ち。閉館前のスペシャルプログラムなのだろう。

 この日もらったプログラムに「中京唯一演芸処 お笑いはまかせてチョ!」と書いてあった。名古屋に残った最後の寄席の灯が消えると思うと、やはり残念な気持ちになる。大須演芸場に足を運んだのは10回に満たないと思うが、もっと通っておけばヨカッタ・・・などと思いながら帰路についた。